大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)144号 判決 1954年8月20日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第一点について。

所論は、本件土地につき熊谷市成田地区農地委員会が自作農創設特別措置法(以下自創法という)により定めた買収計画に対し被上告人がした異議の申立は、自創法七条一項但書に定める縦覧期間を経過してなされたものであるから無効である。従つてこれに対する農地委員会の決定及び右決定に対する訴願並びにその裁決もすべて無効であり行政事件訴訟特例法一条の行政処分とはいえない。さればこれを看過した原審は職権調査事項である訴訟要件についての判断を遺脱した違法があるというにある。

按ずるに行政処分に対する異議申立が法定期間経過後になされた場合異議決定庁はその事案について諸般の事情を考察し宥恕すべき事由があると認めるときはその裁量によりこれを受理することができるものと解するを相当とする。然らば本件被上告人の異議申立が法定期間を経過しているに拘らず成田地区農地委員会がこれを受理決定したのはその裁量権によつて宥恕したものと解されるのである。されば異議に対する成田地区農地委員会の決定は有効でありこれに対する訴願並びに裁決は違法でない。そして本件訴訟は訴願裁決後一ケ月以内に提起されたことは記録上明らかであるから訴訟要件に欠くることなく論旨は理由がない。

同第二点について。

被上告人所有にかかる本件土地が自創法第五条第五号にいわゆる「近く土地使用の目的を変更することを相当とする農地」に該当することは原判決の確定するところである。然らば成田地区農地委員会は本件土地につき県農地委員会の承認を得て同条同号の指定を行い同三条の買収の目的から除外すべきものであるにかかわらず右指定の手続を為さずして買収計画を樹立したことは違法であるといわなければならない。然らばこれと同旨に出た原判決は正当であり論旨は理由がない。(昭和二七年(オ)第八五五号同二八年一二月二五日第二小法廷判決参照)

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例